あらゆる災厄を打ち払い、魔を退散させる厄神明王。その眷属にして使いでもある気高き龍は、人の世を聖なる光明で照らし、人々を護り導く。三千世界の深奥に広がる龍樹の森で、久遠の時を生きた龍は静かな眠りにつく。やがてその身は龍樹となり、森に棲む聖獣たちを育む。時が満ちればふたたび明王の魂を拝受し新たな息吹を吹き込まれ、高き天空に舞い昇る。烈しき眼光は災厄を退け、尖鋭なる牙と爪で悪を断つ。衆生の願いを受けた如意宝珠を携え天空を舞うその姿を、人は厄神龍王と呼ぶ。

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  龍

  仏教発祥の地・インドにおいて龍は仏法を守護する存在であり、恵みの雨をもたらす水神として祀られることもある。
  厄神明王の半身である不動明王が右手に持つ倶利伽羅剣にも龍が巻きついており、悪を断つ象徴とされている。
  
  天に向かって飛翔する昇り龍は、開運・昇運を顕すものとして古くから人々に馴染み深いものである。

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  獅子

  厄神明王の眷属である制多迦童士の乗り物（獅子座）。
  百獣の王である獅子は、その咆哮によってあらゆる生き物を震撼させる力を持つ。
  人々の抱えるさまざまな迷いを打ち砕き、その目を覚まさせる仏の説法を
  大獅子吼と呼ぶ所以である。

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  象

  厄神明王の眷属である矜羯羅童士の乗り物。
  インドの神話では世界を支える存在とされ、普賢菩薩の乗る霊獣として描かれることも多い象。釈迦は白象の姿で母胎に入ったと語り継がれていることから、象は神聖なる霊獣と考えられている。仏の慈悲の象徴、あるいは豊饒の象徴とも考えられている。

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  宝珠

  厄神龍王が尾の先に携えている如意宝珠。
  災いを遠ざけ、病を癒し浄化するなど、意のままに人々の願いをかなえる珠とされ、仏の教えを象徴するものともいわれる。
  仏舎利の変形であるという説もある。

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  樹々

  仏教の三代聖樹とされる、無憂樹、菩提樹、沙羅双樹。
  それぞれ、釈迦の誕生と成道、入滅に関わりの深い樹木である。
  この「龍樹の森」にも、これらの樹々が繁茂しているのだろう。